平成21年10月4日、第29回兵庫県透析研究会にて発表
「デイサービスを利用した高齢透析患者への生活支援、第1報
1)当院は平成12年に、腎不全診療を特色としながら、内科専門医としてはば広く地域医療に貢献することを目標に開院しました。
開院して9年が経ち、あらためて透析患者の高齢化、合併症の複雑化に、新たな対応を求められていると感じています。
2)「住み慣れた地域で、いつまでも住み続けたい。」というのは、昨今高齢者福祉の現場で、強調されるフレーズです。
ずっと継続していかなければならない透析という医療を背負った透析患者にとっても、いつまでも住み慣れた地域で、透析医療を継続したいというのは切実な願いです。
3)そんなある日、私は、デンマークの高齢者福祉を研究する、松岡洋子さんの講演を聞く機会がありました。
松岡さんの講演を聴いて、私はデンマークという国は、すでに1988年に新たな高齢者福祉施設(日本で言うところの特別養護老人ホームのような大型福祉施設)の建設を、法律で禁じたということを知りました。
これは、私には大きなおどろきでした。
日本では、特養待ちの高齢者があふれる一方で、療養病床の削減から高齢者の社会的入院の是正が叫ばれ、その受け皿としては、有料老人ホームや、高齢者専用賃貸住宅への移行が促されるなど、カタチを変えた高齢者施設の建設が喧伝される現状と比らべると、デンマークでは大型高齢者福祉施設の新たな建設を法律で禁じたというのは、衝撃的でありました。
4) デンマークはこの大胆な施策を取る際に、周到な準備をしています。
すなわち、住まいとケアが一体化した大型福祉施設から、住まいとケアを分離して地域に解放したと言えます。
スライドは、松岡洋子さの撮影による、デンマークの高齢者施設の一例ですが、このように高齢者住宅を周辺に整備し、その中心に、ケアセンターを共有スペースとして整備したと聞きます。
7)我々は、このようなデイサービスを中心とした共有施設を作り、地域に解放することで、住みなれた地域で住み続ける支えにすることができるのではないかと考えました。
8)そこで私たちは、昨年から、クリニック近くに旧家を購入し、リフォームを施し、「在宅療養支援ハウス 中州・有隣荘」として、デイサービスを開始しました。
食事と入浴を支援の基本としており、当日食材を求め、現場で利用者ともども調理しています。
10)加えて、写真は地域の自治会の主催による、独居高齢者への食事会の写真であるが、このように地域の共有スペースとして、地域へ解放しています。
11)この施設を利用して、透析患者にも支援を行っていますので、その現状を報告します。 |