強い酸性の状態にある胃内には細菌は住めないと思われていましたが、20年ほど前に、オーストラリアの学者が、ピロリ菌が胃の粘膜細胞に付着して棲息していることを見つけました。ピロリ菌は自身が持つ尿素分解酵素活性をもって、それによって作られるアンモニアが胃酸を中和して、菌が棲息できる環境を作り出しています。
ピロリ菌に感染している人は、十二指腸潰瘍や胃潰瘍に3-4倍なりやすいことが報告されています。十二指腸潰瘍患者の90-100%、胃潰瘍患者の70-80%がピロリ菌に感染していることが知られています。
しかし一方で、日本人では潰瘍のない元気な50歳代以上の人でも70-80%がピロリ菌に感染していますので、実際の潰瘍の発生には生活習慣やストレスなどほかの原因も関係していると思われます。
ピロリ菌陽性の胃潰瘍の場合、ピロリ菌の除菌療法が薦められます。これは除菌により、潰瘍治癒率が向上するだけでなく、除菌に成功すると潰瘍の再発も少なくなるからです。
わが国では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)と呼ばれる強力な胃酸分泌抑制剤と、アモキシシリン、クラリスロマイシンの2剤の抗生物質をあわせた3剤療法が保険適応とされています。
除菌開始時期は、潰瘍治療の最初に行う場合と、先に潰瘍の治療を行った後に除菌療法を行う方法がありますが、いずれの時期に行ってもよいとされています。
除菌終了後4週間を経過した時点で、ピロリ菌の除菌が成功したかどうか、効果判定を行います。PPIはピロリ菌に静菌作用を示しますのでPPI終了後4週間して除菌効果を判定することが勧められます。
| BACK
|
|