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かかりつけ医通信 第5号 2001年10月12日発行
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健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
▼目次▼
○狂牛病の知識
1.何が原因か?
2.感染ルートは?
3.人間には何が起こるか?
4.注意すべき点は?
○インフルエンザワクチン接種
1.ワクチン接種回数
2.接種料金の高齢者公費負担
○日本の医療は、費用が安くて、質が高い
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○狂牛病の知識
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その昔、牛肉というと高価なもので日本人には贅沢品の一つでした。
しかし、最近の焼き肉ブームが物語るように、現在ではとても身近な
食材となっています。
その牛肉をめぐって新しい病気が登場してきました。「焼き肉を食べ
ても大丈夫ですか?」「牛乳は安全ですか?」というようなご質問を
患者さんからお聞きする事も多くなってきています。
何が分かっていて何が分かっていないのか。
今回のかかりつけ医通信は、狂牛病(正式名称:ウシ海綿状脳症
(bovine spongiformencephalopathy: BSE))に関する情報をお届け
いたします。
1.狂牛病--何が原因か?
プリオンと名付けられた蛋白が原因と考えられています。これは正常
の動物に存在する蛋白ですが、「正常プリオンがなんらかのきっかけ
で異常プリオンに変わったり、外から異常プリオン(病原体)が接種
されると、その異常プリオンは正常プリオンに働いて、それを異常プ
リオンに変えていく。その結果、異常プリオンがゆきだるま式に増加
する」(http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jsvs/prion/pf38.html参照)
結果、感染により病原体が増殖するのと同じ意味をなすと解釈されて
います。このような疾患を「プリオン病」と呼ばれています。
2.狂牛病--感染ルートは?
牛から牛への感染は、狂牛病の異常プリオンを含む牛骨粉飼料が媒介
する事が知られています。
牛から人への感染経路は、牛の異常プリオンの混入した食品を食べる
こと、つまり口から入ることにより感染が成立すると考えられていま
す。異常プリオンは蛋白質でありながら、消化液などによる分解を受
けにくいという特性を持っています。
(http://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/bsecjdexp.html参照)
3.狂牛病--人間には何を起こすのか?
ヒトのプリオン病の大半はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と呼ば
れる疾患です。このうち非定型的なCJDが狂牛病と関連すると考えられ
ています。非定型的CJDは「20代の若年に好発する。不安、感覚障害で
初発し経過が長いのが特徴とされ、無動性無言状態に陥るのに1年を
要する」(http://www.med.or.jp/kansen/jakob.html参照)とされてい
ます。
4.狂牛病--注意すべき点は?
狂牛病自体がまだ未知な部分の多い疾患であり、それに加えて農水省
の無責任な管理体制も混乱に拍車をかけています。一部のマスコミの
パニックを煽るような報道姿勢も、人心を惑わせています。
現在、国民が不安になっている最大の原因は、情報の不足と混乱
です。不安を解消するために、行政、業界、マスコミは、信頼できる
情報を、出来るだけ早く広く冷静に、国民に伝えるべきだと思います。
狂牛病の正しい知識
http://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/bse.html
国立精神神経センター神経研究所疾病研究第七部「金子清俊氏による
WHO伝播性海綿状脳症感染コントロールガイドラインなど」
http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r7/
農林水産省「BSE関係Q&A」
http://www.maff.go.jp/soshiki/seisan/eisei/bse/bse_qa.htm
日本医師会「クロイツフェルト・ヤコブ病と狂牛病」
http://www.med.or.jp/kansen/jakob.html
日本獣医学会「日本初の狂牛病:質問へのお答え」
http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jsvs/prion/kyougyubyou.html
難病情報センター「遅発性ウイルス感染に関する調査研究」
http://www.nanbyou.or.jp/kennkyuu/k_11/13/13.html
動物衛生研究所「牛海綿状脳症 -BSE- (狂牛病)のページ」
http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/bse-s.html
日本での狂牛病発生についてのQ&A「日本生協連安全政策推進室による」
http://www.co-op.or.jp/jccu/Press_Release/Press_011009_01.htm#16
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○インフルエンザワクチン接種
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そろそろ今年もインフルエンザの予防接種を考える時期になりました。
インフルエンザワクチン接種についての最近の話題をお伝えします。
1.ワクチン接種回数について
かつてインフルエンザワクチンは年齢によらず1〜4週間の間隔を
おいて2回接種が基本でしたが、昨年7月の中央薬事審議会を経て、
インフルエンザワクチン薬事法上の用法・用量が変更されました。
そのうち接種回数について
1)65歳以上の高齢者に対しては一回接種とする。
2)13歳以上64歳末満のものについては二回接種を原則。
3)13歳末満のものは従来どおり二回接種。
とされました。
65歳以上の高齢者に対するインフルエンザワクチンの有効性を
検討した結果、接種回数は1回で十分(1回の予防接種で十分に抵抗
力がつく)との結果が出ており、65歳以上は1回の接種でよいと考え
られます。又、13歳以上64歳末満のものについては二回接種を原則
とするが、近年、確実にインフルエンザに罹患していたり、毎年インフル
エンザワクチン接種を受けていて、医師が基礎免疫があると判断した
者については、1回接種でも良いとなりました。但し、13歳未満の小児・
乳幼児は今まで通り2回接種です。
日本医師会 インフルエンザQ&A
http://www.med.or.jp/kansen/inqa_b.html
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2.インフルエンザワクチンの高齢者公費負担
a.予防接種法の改正法案
現在は任意で実施しているインフルエンザの予防接種を、65歳以上の
高齢者については国が接種を勧める「勧奨接種」に改め、費用の一部を
公費で負担する予防接種法の改正は、昨年から何度か国会に提出されて
いました。
改正案の要綱によると、「インフルエンザを新たに予防接種法に基づく
勧奨接種の対象に加え、現在は希望者の全額自己負担となっている接種
費用の一部を市町村の公費で負担する。副作用で健康被害が発生した
場合も法的救済の対象となり、医療費や障害年金などが給付される」と
されています。
この法案が国会を通過すれば、10月1日から高齢者への接種には公的
補助が受けられようになる為、接種料金や補助の金額については多くの
市町村で医師会との契約も済み、すぐにでも対応できるように準備が進め
られていました。
b.その現状
インフルエンザの予防接種は流行前の1〜2ヶ月前から接種するのが
普通で、一般的には毎年11月には接種を開始しています。
ところが現在、国会はテロ対策法案の審議で紛糾、上記の改正法案の
審議には至らず、此の侭、12月以降に実施がずれ込めば、予防接種の
意味が無くなりますし、既に準備を進めている現場では混乱します。
人為的なテロも確かに怖いですが、適切な接種時期を逸して大流行すれ
ば、インフルエンザは更に怖い存在です。過去に審議未了で廃案となった
この法案ですが、実施時期が迫った大切な法案ですので、早急な審議が
望まれます。
c.その他
補助の対象は居住地の市町村と契約した医療機関だけですので、他の
市町村に入院や入所されている場合には公費補助がされない場合もあり
ます。又、65歳以上でワクチン接種希望の方は、法案が通るまでの接種
は自費となりますので各自治体や医療機関で確認して下さい。
予防接種の改正法案に関する衆議院の議案
インフルエンザ予防接種の問題に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/shitsumon/a150070.htm
インフルエンザ予防接種の問題に関する質問に対して 総理大臣の返答
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/shitsumon/b150070.htm
予防接種法の一部を改正する法律案要旨
http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/rchome/@Ugoki/kouseiroudoui/151yobou.htm
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○日本の医療は、費用が安くて、質が高い
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国民の多くが、日本の医療について、以下のような誤解をしており、
そのために、間違った医療改革案を選んでしまう危険があります。正
しい医療改革を行うためには、正しい現状認識から出発することが大
切です。
【誤解】日本の医療は、費用が高くて、質が低い
【正解】日本の医療は、費用が安くて、質が高い
その根拠は、何でしょうか。
1)世界保健機構(WHO)が、昨年、加盟191カ国の保健医療システム
について比較した結果、総合評価では、日本が世界で一位でした。
2)経済協力開発機構(OECD)の調査では、国内総生産(GDP)に対す
る総医療費の比率は、日本は、先進国の中で最も低いレベルでした。
3)経済財政諮問会議の声明でも「我が国の健康指標は世界最高水準
にある。これは戦後の我が国の医療政策・国民皆保険体制の成果であ
るといってもよいであろう。」と述べている。
つまり、現在の日本の医療制度は、色々改善すべき問題点もありま
すが、全体としては、「安くて、質が高い」という点で、世界的に最
高水準にあります。日本の医療は「高い」、「質が低い」という誤解
から、改革策を考えると、大きく方向を間違える危険性がありますの
で、ご注意下さい。
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【発行】 「かかりつけ医通信」発行委員会
【編集】 長島公之(委員長)、安藤潔、本田忠、吉岡春紀、吉村研
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