できごと徒然
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No.0052

できごと徒然(52) − 宝塚市内の老人介護施設見学会 −

 


 〜 ついに行く道とはかねて聞きしかど昨日けふとは思はざりしを〜

在原業平の辞世の歌だそうです。
辞世というわけではありませんが、老いというあまねく万人に訪れる 不可避の事態を、いかに迎え、いかに自分らしくその生を終えるか。 未来永劫万人共通の命題ではないかと思います。

2005年も、リサナメントの歩みは続きます。リサナメントの歩みも今回で14回目になります。
昨年の秋には、「宝塚市の医療と福祉の連携を模索する」 シンポジウムを企画しましたが、今回のテーマはその発展型でもありますが、 「住み慣れたこの街で、いつまでも安心して暮らしていきたい。」 その思いを叶えるには、施設も必要だということになりました。
そこで2月13日(日)、第14回のリサナメント宝塚の集まりは 宝塚市内の介護施設を訪問見学することを企画しました。

代表の上阪和尚様にもご参加を頂き、総勢20余名が集まりました。
中高年の女性が多かったですが、高齢の両親を抱える方、 自身の将来像を重ねる人も多かったことと思います。
今回の企画に先立ち、代表の上阪和尚様から以下の文章が届きました。


(前略)
寒中、春が心待たれるころです。新春から早一ヶ月が経とうとしています。
見学に関し、小生の意見を送らせていただきます。
見学者という「外部からやってきました」との顔は利用者には辛いものであると思います。施設にいる利用者たちとどんな共通基盤に立てるのか、そんなことを探している人となら和やかに過せるでしょう。
そんな意味で、利用者が出会いを通し笑顔になれるものを見学参加者が持っていける準備を必要としています。見学参加者が利用者から教え、話してもらう(与 えてもらう側)だけに立つと違和感を感じさせるでしょう。
各人が喜びをもち、生き生きと生きようとしている姿を相互に確認しあえると 「安心の場」が生じるのではないでしょうか。品物を贈るのではなく、文化をプ レゼントできればよいと思います。

(例)
1.私の好きなこの季節の料理と調理
2.心打たれた詩の紹介
3.慣れ親しんだ歌、謡曲    など  

                         上阪 法山



見学は、この上阪師のお言葉を皆で確認した後、始まりました。

最初は、宝塚市民病院の横にある、老人保健施設の「ステップハウス宝塚」です。
老人保健施設ですから、原則は3〜6ヶ月で自宅へ復帰することを前提にしています。ですからリハビリなどに注力されており、入所、通所のリハビリを行っています。

施設はちょうど出来て10年の節目を迎えたそうです。
介護保険が誕生して5年。今年は介護保険の見直しが行われる予定ですが、10年前にすでにこのような施設が創られていたわけです。

運営母体である、宝塚市保健福祉サービス公社の稲本次長様に施設の概要をご説明頂いた後、大串課長様が休日にもかかわらず、施設内を案内して下さいました。とても優しそうな方でした。

10年を迎えたにもかかわらず、室内は清潔でした。
4階に広いリハビリテーション室が設けられており、 通所者、入所者のリハビリが行われています。
2、3階は入所区域です。

ちょうど、お昼前で入所の方が皆車椅子に乗られてフロアに出ておられました。
我々の姿をみて、早速一人の老婆が、ハーモニカを吹き出して下さいました。軽度の認知症がおありなのでしょうが、ハーモニカから奏でられるメロデイに我々見学者が口ずさみ、ひと時の時間が共有出来たように思いました。
見学者も、早速に上阪師のお言葉を実践できたようでした。

居室は、二人部屋四人部屋とありましたが、カーテンで区切られるものの充分に広く感じられました。家具も木調で自宅のような雰囲気でした。
入浴施設も見学させて頂いて、本当にゆっくりと見学することが出来ました。

2番目は、市内御殿山のこだま病院が開設されているグループホームを見学しま した。
グループホームは主として認知症の人が、9人程度の少人数で、自宅に近 いような施設の環境で共同生活を営む施設です。
認知症の方には、いろいろな意味で最もふさわしい施設であるともお聞きしてい ました。
ここも各人の居室は充分に広く、いろいろな自分の愛着ある家具を持ち込むこと も可能だそうで、自分の居宅に近い環境をつくることが出来ます。
グループホームからの眺望もよく、また4階に作られたリハビリ室からは阪急宝塚駅やソリオなどの宝塚の中心を眺めることができます。
宝塚で生まれ育ったご老人には、馴染み深い風景だと思いました。
ここのお風呂は、総ひのきの浴室が4槽ありました。
木の香りがして、とても感じが良かったです。
お一人ごとにお湯も代えてとのこと、ご苦労が偲ばれます。
見学した3施設の中でも、やはりグループホームという最も規模が小さい施設ゆえ、最も家庭的な雰囲気でした。
入所費も最も高額ではありましたが、このような環境で過せるご老人は幸せではないかと私は感じました。
職員の方が、皆楽しそうに仕事をされていたのも印象に残っています。
日曜日というにも関わらず、ご案内頂きました関係の方々に厚くお礼を申し上げ ます。

三番目の施設は、御殿山の高台にある「夢御殿山」という特別養護老人ホームです。
夢御殿山の入り口は、まるでホテルのようにゴージャスでした。
老人施設もこのような時代になったのかと、目を丸くしました。
広々としたエントランス、眺望、とにかくゆったりとしていました。
入浴施設も広々しているだけではなく、ハイテク入浴施設で、シャワーチェアのまま、湯船に浸かることのできる設備には驚きました。

入所者の居室も広々した個室でした。
高台であるだけに、六甲山はじめ宝塚の市街を一望することができます。
その他、ショートステイ、介護保険未対応の人が在宅生活に復帰できるように支援する施設などもそろっていました。
施設長はまだうら若き女性でしたが、ご苦労も多いことと思いますが、やりがいのある仕事と話されていた姿に頼もしさを感じました。

こうして一日で、市内の三ヶ所のそれぞれ三様の老人介護施設を見学することができ、市内にもこのような充実した施設があることを知り、一同それぞれの老後にも一抹の安心を感じた次第です。

見学会の後に、皆で昼食を楽しみましたが、その席で上阪先生のお言葉がやはりまた印象に残っています。

「いろいろな施設で介護を受け、リハビリも受け、そうやって得た筋力でその老人は何をするのか?何もすることがなく寝込んでしまうのではせっかくのリハビリも役立っているとはいえない。 その老人たちが、得た筋力でもって、ささやかではあっても主体性をもって行動できるように支援することがやはり必要ではないかと。」

市役所の松藤さんからは、「11歳以下の小児に最も影響を与えられるのは75 歳以上のご老人であることが分かってきた。老人たちが、なお社会で必要とされていることを伝えることが大切ではないか。」

他の方からも、「このご老人にはこのようなことができるというgiveの情報と、 私たちはこのようなことをして欲しいというtakeの情報をコーデネイトする場所があったらいいですね。」というようなお話や、エコマネーというような試みの お話も出ました。

私は今日の見学会を通して、宝塚市内にもこのようにさまざまの施設が、老人介護に尽力されている姿をみて、非常に頼もしく思った一方で、年をとるということは、このように施設に頼らざるを得ないのか、年をとって自宅で過していくという事はそんなにも難しいことなのかと感じた次第です。

まだわが身のこととは考えられないのでしょうね。
私は、今日の施設見学を通して、あらためて自宅で暮らしていくことを 支援していくことはできないのか? 
上阪和尚様の意見も拝聴して、 あらためてその地域で老人を包み、その人らしさを発揮して、その人らしく過していただくことはできないのかと感じた次第です。

そのようなことをもう少し模索してみたいと感じました。

日曜日の一日、施設をご案内頂いた御関係の方々にあらためてお礼を申し上げますとともに、日頃の御尽力に敬意を表する次第です。

 

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