|
【平成16年10月30日】
無事「すみれの花を愛するまちのシンポジウム」 が終了いたしました。
参加170名をもって盛会に終わりました。 当日の余韻さめやらぬ今、記憶にとどめるべく記載します。
御参加いただきました御歴々の方を私の知る範囲で申し上げますと、宝塚市医師会長の山崎之嗣先生、前医師会長の野川先生を筆頭に医師会の諸先生方、宝塚市民病院の小坂井院長、リハビリテーション科の乾部長、MSWの藤本様、宝塚市社会福祉協議会
今井理事長はじめ社協のかたがた、宝塚市保健福祉サービス公社の鵜沢さんはじめ皆さん、せいれい福祉事業団の杉山さんはじめ皆さん、大学からは大阪大学病院長の荻原教授ご夫妻、三上教授、関西学院大学から浅野教授、渡邊教授、市会議員のかたはじめ、行政市役所からも多数参加いただきました。
文字とおり、宝塚市の医療と福祉の分野で最前線で活躍しておられる方々に御参加を頂けました。誠にありがとうございました。
【平成16年5月27日】
松藤さん
|
そもそもは、平成16年5月27日。
いままでのリサナメントの歩み(http://www.reference.co.jp/imai/patient/index6.html#top36)の中で出会った市役所の松藤さんや、稲本さんとちょっとした会食を楽しみました。
友人のK先生、お隣の山林さんもご一緒です。 リサナメントという市民の集いについては、以下を参照ください。 http://www.reference.co.jp/imai/patient/index1.html#top9
燃えるリサナメント
|
ことの発端は稲本さんと今井が遠い親戚で、毎年一回有馬でお会いするうちに、一度松藤さんや山林さんを交えての会食をという話になりました。今まで、この町で医療や福祉にそれぞれの立場で関わってこられた人ばかりです。いろいろな人がそれぞれの個別の努力だけではなく、立場を越えて目線を同じに
考えることが出来たらと、皆なんとなく心の中で思っていたようで、それがなんか突然として実現した感じです。
最初こそみな緊張した表情でしたが、話すうちに、生来のパワーが湧き上がり、世代を超えての大盛会になりました。皆さん、それぞれこれまでの活動の中から、豊富な人脈の輪が広がり、ネットワークはどんどん果てしなく広がりました。
最期は、マクベスの話やら、オペラアイーダの話やらの高尚な話題が飛び混じり、次回は山林さんのご自宅でカレーをご馳走になりながら、計画を進めるところま
で話が進みました。
以来、シンポジウムの当日まで、世代を超えた熱い集まりが続きました。
桐さと実さん
|
【企画】
シンポジウムの主題は、「住み慣れたこのまちで、いつまでも安心して暮らしていけるように」と定めました。この時点で松藤さんの頭の中では、「地域性」、「高齢者の残存能力の活用」、「ピア(仲間)ボランテイア」、「たがいに手を
さしのべる関係」などのキーワードを抑えておられたように思います。
ながく宝塚市の地域福祉計画に関わってこられ、アメリカもふくめ世界の福祉施策の状況にも精通されています。松藤さんの構想は昔見学に行かれたミシガン
桐さと実さん
|
大学ターナークリニック、ジェリアトリックセンターのルースキャンベルさんを基調講演に、また厚生労働省から介護保険の創設から関わられた伊原和人政務次官をシンポジストに招くというビッグイベントに成長しました。
そしてなにより安心して生活していくには、健康を守る医療のかかわりなくしてはありえないということで、宝塚市医師会の後援を頂こうと話は進みました。副会長であられ、日頃からいろいろとご指導を頂いている末岡先生にお願いし、出演していただくことができました。御厚誼に感謝いたします。そして宝塚市医師会も快く後援をお引き受け頂きました。
さらに宝塚らしさを盛り込もうということで、会場を宝塚大劇場に設定しました。ここなら華やぎが演出できます。そして宝塚歌劇団にお願いして、タカラジェンヌ
に歌唱をお願いすることにしました。難しいお話を最後は美しい歌声でくるもうという趣向です。宝塚歌劇団も快く協力を頂き、桐さと実さんというかたをご推薦頂きました。美しかったです。そしてやはり場は華やぎ、くつろぎが生まれ、会話が弾んだように思います。
【キャンベルさんのお話】
さて当日。あたかも結婚式をあげるかのような興奮を感じながら、会場に入りました。
会場は宝塚歌劇場3階にあるエスプリホールです。ローズピンクの窓掛け、同色の椅子が並べられ、華やいだ雰囲気です。(写真:会場)。
正面には、「すみれの花を愛するまちのシンポジウム」と書かれた垂れ幕が引き立ちます。これも印刷業を営む私の高校時代の友人の作ですが、花の字が緑に、愛の字が赤く染められた
おしゃれな字幕です。
鳥越さんの司会についで、このリサナメントの種を蒔いた魔法使いの山さんの御挨拶でシンポジウムの幕が開きました。
会 場
|
魔法使いの目線の先は
|
ルースキャンベルさん
|
基調講演はルースキャンベルさんです。
通訳は私の先輩でもあり関西学院大学保健室の円山アンナ先生です。ミシガン大学医学部ターナークリニックに所属するソーシャルワーカーであられるキャンベルさんは、
http://www.reference.co.jp/resanamento/
でも御紹介いたしましたが、米国で やはり高齢者が住みなれたまちで安心して暮らしていけるようにと、ピアボランテイア グループとチームアプローチという手法で高齢者の支援組織を組織されました。
まずピアボランテイアグループですが、これは二つの点で高齢者の生活を支えているといえます。ひとつは現実的ですが、たとえばアメリカは医療費がとても高いことは有名ですが、いろいろな書類を作成することで医薬品を無料で入手することが可能だそうです。そのような書類の作成をボランテイアが行うことで、高齢者の生活を支えるということ。もうひとつは、高齢者が高齢者を支えることで自らが生きがいをえるという構図です。差し出すことが、同時に与えられるという一面をもつというわけです。
医療費が極めて高額であり簡単に医療機関にアクセスできないという実情が、ボランテイアの成長を促すという皮肉な一面もあるようですが、キャンベルさんは実に多彩なボランテイアグループを組織されていました。
なかには、遺言書(リビングウイル)を作成するグループなどもありました。
ボランティア
|
チームアプローチ
|
もうひとつは、チームアプローチです。
キャンベルさんは、このチームアプローチを示すスライドを、 アメリカでもっとも人気のあるスポーツである、バスケットボールを例にとり、ミシガンを地元にする、PistonsがNBAで優勝した例をとり、チームプレーの重要性を示されました。
互いの立場を認めること、コミュニケーションの必要性など、これは今回シンポジウムを開くにあたって動機となった、介護保険などにより訪問看護師、介護士はじめ多職種のかかわりが実現するようになった際に、どのように実際の
連携をとっていくかという問題意識とまったく同一です。
日本とアメリカ、社会も制度もまったく異なるとはいえ、高齢者の生活支援と いう意味では多職種のかかわりが必要になるのは、洋の東西を問わず同様と感じました。そしてそのための連携の模索、日本でもアメリカでも同じようにチームアプローチの重要性が強調されています。
【シンポジウムの内容】
キャンベルさんのお話を伺ったのち、パネリストによる発言にうつりました。
宝塚市医師会の末岡先生からは宝塚市の医療の現状の解説、医師会の取り組み、在宅医療、病診連携への取り組みなどが紹介されました。伊原さんのピンチヒッ
ターの茨木市在住の山田芳子さん「高齢社会をよくする女性の会・大阪 副代表」からは、介護保険の問題点などが指摘されました。
私(今井)はシンポジウムの発言の最後に発言を求められ、以下のお話をしました。
まず、このようなシンポジウムを計画したいきさつ。キャンベルさんのスライドにも あったように、身体的医学的問題以外に多くの社会的問題を抱える高齢者を支え
るには、おのずと多職種のかかわりが必要になってくる。先述のように相互の連携をとることが必要とされながら、実はそれぞれ多忙で連携をとることがたいそ
う難しいという現実から、それなら一度全員集合とばかりに、このまちの医療と 福祉の現場の最前線で働く人に声をかけて、互いに顔の見合える距離で話し合おう。そして市民にも市内にはこんなサービスがあることを知ってもらおうと考えたことをお話しました。
ついでキャンベルさんが、MSWという立場で高齢者の支援グループを考えられたように、これが日本であれば、やはりケアマネージャーという立場の人がこのような高齢者の支援の中心になっていただけないだろうかと話しました。今振り返ってみれ
ば、もう一歩踏み込んで、本来ケアマネージャーは特定の施設に所属することなく 自立した立場で活動できるように、ケアマネージャーの処遇の改善をこのような
シンポジウムを通して提言するべきではないかとまで、発言すればよかったと今反省しています。
最後に、在宅医療という問題に触れて、医師会でも準備の用意があるとの発言をうけて、基幹病院である市民病院との連携、また医師同士の連携といったものを進めていく必要があると話しました。
実際、私が当地で開業してから4年が経ちましたが、その間同業の若手医師と 勉強会を開催するといった活動も重ねてきました。そのような活動があったから
こそ、このシンポジウムが開催できたともいえると思います。 今後もこのような医師としての専門家としてのネットワーク作りも進めるとともに、リサナメントのような市民とのネットワークに重ねていくことができればと願っています。
一部、ある患者様が早速にシンポジウムの様子を記載してくださっていますので、参考にしてください。http://www.fururu.net/user/fumi-yu/
最後は、キャンベルさんの師匠が、いつも授業の最後で紹介されるというワーズワースの詩が紹介されました。
【ワーズワースの詩】
For age is opportunity no less,
Than youth itself, though in another dress.
And as the evening twilight fades away,
The sky is filled with stars, invisible by day.
Henry Wadsworth Longfellow, 1875 |
年を重ねること
それは若さそのものに劣らぬ機会
ただ異なった衣服をまとっているだけ
夕闇に陽の光が消え行くとともに
空は昼間には見ることのできなかった
幾多の星で満ちていく。 |
この場に、集った、医師、看護師、介護士、そして市民が一堂に会して、視線を同じくして、この詩をくちずさんだことが、みなの心に、共通体験として残るとすれば、こんなにうれしいことはありません。
【タカラジェンヌの歌声にのせて】
すこし難しい話を勉強した後は、音楽と食事を楽しみましょうという企画です。
会場を隣に移して、先にも紹介した元宝塚歌劇団月組の桐さと実さんにお願いしました。定番ともいえる、「すみれの花咲く頃〜。」にはじまって、宝塚メドレーです。伴奏も同じく、歌劇団の福島洋一様にお願いできました。ロマンスグレーの陽気な方です。桐さんの歌声と、軽やかなステップに、タカラヅカファンならずともうっとりとした時間を
過ごしました。皆様くつろいでいただけたようです。
やはり、身近で”生の持つ迫力”を感じました。いわゆる、”ライブ”というものかな。私もこんなに近くで、タカラジェンヌが歌う姿は初めて拝見しました。
本物のもつ迫力というものでしょうか、艶々(つやつや)しい歌声は、皆の心に響きます。
【乾杯】
歌唱のあとは、食事の開始です。
乾杯の御発声は、宝塚市社会福祉協議会理事長 今井円明様にお願いしました。
円明さまは乾杯に先立ち、みなで手をつなぎあうことを促し、共に、「えいえい おー」と掛け声をかけようと提案されました。このまちで医療と福祉の現場で働くいろいろな立場の人が、そして市民が文字と
おり手を繋いだ瞬間です。なかなか感動的でした。
乾杯の発声につづき、食事が始まりました。
あちこちで笑顔がはじけ、皆様楽しそうなひと時を過ごしていただきました。
あらためて、ひとところに会して皆で共有の時間を過ごすこと。
顔の見える関係を築くこと、大切なことと認識しました。
今回のシンポジウムを計画して本当によかったと思っています。
【おわりに】
今回のシンポジウムの準備に当たっては、山さん、松さん、稲さん、鳥さん、今さんの 5人の実行世話人が、それぞれ皆が自分にできる範囲で、すこしづつかかわりを
もつ。自主的に誰から命令されるわけでもなく、皆が自分にできる範囲をこなしました。それもすごいスピードで。どうして何も言わないのにこんなに円滑に、猛スピードで進んでいくのだろうかと、我ながら感心してみていました。
皆が手弁当。文字通りのボランテイア。
こんなことができたのは、「住み慣れたこのまちで、いつまでも安心して暮らしていきたい」という気持ちは、皆に通じる大是であったからではないかと思うのです。
ひとつのイベントを仕上げて、皆で集う楽しさを、自分が主体的に関わる楽しさを あらためて実感できたシンポジウムでした。
ご協力いただいた方々に、そして参加していただいた方々に心からお礼を申し上げます。
【最後に、上阪法山師より】
シンポジウムが終わった翌日、早速にリサナメント宝塚の代表世話人であられる、上阪法山様より、以下のメールを頂きました。最後ではありますが、ご紹介させて頂き、ご指導にお礼を申し上げます。
--------------------------------------------------------------
細部にわたりご配慮いただき有り難うございました。多面からの検討を加えていただいた企画に感心する次第です。歌あり、食あり、新し
い智恵の提示あり、集いやすい機会の企画を示していただくことありで、楽しめる ひとときとなって成功裡に幕を閉じられたと思えます。
ここに足を運ばれる方たちが、お洒落に心うきうき来場される様子、また、お互いに 交わす笑顔や言葉を多くして帰路につかれる様子に、今回の集いでお感じになった「温かさ」が市民を繋ぐ力になってくれると願っています。
いろんな文化に関心をもち、それを楽しむ過程を通し、仲間がつながり新たな動きになるといえるでしょう。
何気なく過ごしていたところに、見出すべき「文化」があったことを発見し、「大切に育みたいと思う主体」が出来てくればと願っています。
合掌
上阪法山
|